「璃久とアトピー」 椿 璃久 9ヶ月 璃久の湿疹は生後 1ヶ月頃からポツポツ出始めた。長男の例もあり、乳児湿疹と思い込んでいたので、そのまま過ごしていたら治るどころかどんどんひどくなって、耳の付け根から汁が出だした。(乳児湿疹も脂漏性湿疹もアトピーも全て同じものなのです。つまり同じ原因なのです。母乳から入った化学物質に対する免疫による排泄作用が皮膚で行われているだけなのです。)これは大変と小児科へ行くと「乳児湿疹です。でも早く治してあげたいから、きつい薬だけどステロイドを出します。」と 3日間、入浴後に塗るように言われた。それでも治りが悪く、市立病院の皮膚科を紹介され、璃久を連れて行った。たいした診察もなく、石鹸とガーゼを変えるように言われ、痒みを抑える飲み薬をもらった。結局意味のない診察という感じだった。良い先生と紹介されたが、何故か信頼できないと思い、一度でやめてしまった。(良い先生とは病気を治せる先生であるはずなのですが、日本では愛想の良い見かけは優しく言葉使いも上品な先生のようです。その意味では私は最悪の医者でしょう。しかし私は必ず絶対にアトピーが治せる世界でただ一人の医者であると断言できる医者です。どちらを選びますか?)璃久の湿疹はますますひどくなるばかりで一向に治る気配が見えないので、今度は母の勧める皮膚科院へ行くことにした。この頃の璃久の顔は本当にひどくて、顔中汁まみれの赤ら顔で頭まで湿疹ができ、痒さのあまり髪まで掻き毟り、夜はほとんど眠れない日々が続いていた。先生は璃久の顔を見るなり「アトピーです」と一言。ものすごくショックだった。家族にもアトピーの者はいなかったので、「何でこの子が?」って思った。とりあえずステロイドを朝・夕 5日間塗るように言われた。それと私は母乳を飲ませていたので食事制限することになった。驚いたことにステロイドを塗ると3、4日で湿疹は消えツルツル肌になってきた。でも額は少し残っていて完璧には消えなかった。5日後、診察に行くと、先生は「これはかなりきついアトピーですね。普通ステロイドを使うと肌はゼロの状態に戻るはずなのに額に残っている。今、ステロイドをやめると8割前の状態に戻るでしょう。ハイハイするようになれば床に擦れるところ全部に湿疹ができるでしょう。」と、全身湿疹だらけの幼児の写真を見せられた。璃久がこうなると思うとかわいそうだし、この先どうなるのか不安で一杯になった。この時、ステロイドに関して無知だったので「今ステロイドをやめるわけにはいかない。アトピーと上手に付き合っていくしかない。」との言葉にただうなずくだけだった。そんな時、友人からステロイドの怖さを聞き、松本医院を紹介され、ここしかないとの思いで璃久を連れてきた。(平成14年2月23日)松本先生は璃久を見て私達に「必ずアトピーは治ります。私が治してあげるから。」と軽い口調で(私に言わせればアトピーの治療などというのは原理的には極めて簡単なのですから、何も重々しく深刻に治してあげるという必要も無いのです。)私達が一番聞きたかった言葉をサラッと言ってくれた。その瞬間、今までの不安が嘘みたいに吹っ飛んだ。今までの璃久の顔を見るたびに涙が出る毎日だったのに、それがこの湿疹は璃久がアトピーと闘った痕とわかると、いくら黄汁と血が出ようが「治るから頑張って」と思えるようになった。(このような手記を読むと私は正しい理論と正しい治療法で治しているのではなくて、言葉で治してあげているという気になります。嘘がまかり通っている世の中で嘘のない自信に満ちた私の言葉に感動するのも当然かもしれません。) 璃久のアトピー治療は、とにかく薬湯に少しでも長く入れ、何度も何度も傷口に軟膏を擦り込んだ。はじめの 1、2ヶ月は黄汁と血が出続け、泣くと汁が溢れ出すという感じで回復の兆しは見えなかった。またこの頃は一人放っておくと顔・頭と掻き毟り、寝返りしては床に顔を擦りつけ、何とかして掻こうと必死になっている姿がとてもかわいそうだった。一進一退しながら、遂に 3、4ヶ月目にして額の湿疹は消え、頬の赤みも消え、夜も熟睡できるようになった。回復し始めるとその回復速度は速く、5ヶ月目過ぎた今では、湿疹は完全に消え、本当にアトピーだったの?と思えるほどになった。最初、本当にこれで治るのかな?と疑問に思った時期もあったけど、診察に行く度に先生の「治るからね」の一言に励まされ、そしてこの一言を信じて頑張れた。今思えば私達が松本医院にたどりついたことは偶然かもしれないが、最後まで先生を信じて本当に良かった。松本先生、本当に有難うございました。(全ての医者が治せない・治らないと言い続けているアトピーを私が本当に治せるかどうかを疑い続けている患者さんに対して会うたびごとに「治してあげる。」と伝えることは強い心のコミュニケーションになるのでしょう。もっとも治るのに治らないと言うのは嘘というものでしょう。でも一生に一度私も嘘をついてみたいものです。「アトピーは治らない。」と言ってみたいものです。私も嘘をつく快楽を味わいたいものです。)平成 14年8月1日椿香苗 |