「夫と赤ちゃんがアトピー」 濱本 奈緒美 2歳

 主人は、子供の頃から顔や首、腕や足に湿疹がよく出ていたそうです。そんな主人に、父親は「そんなものは、大きくなったら必ず治る。」といつも言っていたそうです。(その通りです。昔の人は出物・腫れ物は所かまわずでるが、放置すればいずれ消えることを経験的に知っていたのです。つまり皮膚病で死ぬことはないことを知っていたのです。しかしステロイドが皮膚病で使われ出してから医者の作った永遠に消えない病気になってしまったのです。昔から天然の異物に対してアレルギーはあったのです。例えば漆などがそうです。漆職人の中にアレルギーのきつい人がいても自然と症状が無くなって治ってしまったのです。また養蜂家の中にも蜂に刺されると激しいアレルギーが出現する人もいたのですが、何回か刺されてしまうと自然と出なくなってしまったのです。ここにアレルギーの自然治癒の秘密が隠されているわけであります。つまり無限に侵入してくるアレルゲンに対して、そのアレルゲンを退治する武器であるIgE抗体という特殊な抗体は人体において無限に作ることが出来ないからです。何故かというと単純に言えることは、いかなる物質も人体で無限に作られることはないからです。このことを昔の人は本能的に知っていたのです。)しかし、主人は今もアトピーです。しかもひどい時期には会社を休まなければならないくらいなのです。いったいどうしてこんな事になってしまったのでしょうか。住環境や生活習慣の変化、食品添加物や農薬などの化学物質。そして、ステロイド剤。私には難しいことは分かりませんが、そのようなことが原因で本当ならば「大きくなったら治る。」はずのアトピーが治らないようです。この事を、私達に教えて下さったのが松本先生です。

 子供の頃からステロイド剤を塗り続けていた主人は、5年半前松本先生に出会い、ステロイド剤を完全に止めました。そして、漢方の煎じ薬を飲むようになりました。飲み始めた頃は、ステロイド剤のリバウンドで、顔だけでなく全身がジュクジュクになったそうです。

 4年前主人と出会った頃は、お陰で症状も落ち着いていました。アトピーのことをよく知らなかった私は、結婚を決める前に「アトピーなんだ。」と言われても、それ程深刻には考えていませんでした。ただ妊娠中は、子供がアトピーにならないことを願って、卵や牛乳等の食事に気を付けていました。それでも娘はアトピーになってしまいました。(妊娠中に食事に気を付けたりする事は全く無意味です。)

 生後1ヶ月半頃、娘の顔にポツポツと赤い湿疹が出来はじめ、それが顔一面に広がり、ほっぺがまるで焼き餅のように堅くザラザラになってしまいました。2ヶ月を過ぎ、今度は耳たぶから黄色い膿(リンパ液)のようなものが出てきました。驚いて小児科に連れていくと、「脂濡性湿疹でしょう。石鹸でよく洗ってやりなさい。(この診断はおかしいと思います。第一油のように漏れ出す性質のある湿疹という病名は単に形状について述べているだけであって、本質ではないからです。このような病名が皮膚科には多すぎます。アトピーの最初の出方は多様でありこの時にアトピーが初めて出たわけです。従って石鹸で洗っても治るわけはないのです。この医者はこの症状の原因は不潔のためだと考えているようです。笑止千万です。)」と言われ、おそるおそる洗いましたが、耳たぶから出る液は止まりませんでした。処方された非ステロイド剤を塗ると、2日程して、顔も耳もツルツルになりました。(実はこれは非ステロイド剤ではないのです。非ステロイド剤でたちどころに効くものはないのです。非ステロイド剤ですぐに効くのならば、何故ステロイドを使うのでしょうか?このように皮膚科の医者は何の罪悪感も無く嘘をつきます。医者が嘘をつけば罰せられるという法律が絶対に必要です。)ところがあまりの効き目に、ステロイドは入っていないのだろうかと不安になり、使うのを止めました。主人自身がステロイド剤の怖さを身にしみて分かっていたので、子供には絶対使わせたくなかったのです。生後4ヶ月、娘の顔は一面赤くなり、痒いので、引っ掻き傷で血だらけでした。この頃、小康状態だった主人のアトピーも悪化し始めました。これをきっかけに親子三人の松本医院への通院が始まりました。1995年2月のことでした。

 娘にも漢方の煎じ薬が処方されました。大人が飲んでも苦い薬です。いくら少量とはいえ、赤ちゃんに飲ませるのは大変でした。(漢方で本質的にアトピーを治しているわけではありません。そんな漢方の処方は一つもありません。ただ漢方の一番大事な特色は処方に応じてそれぞれの組織や器官の血流を改善し、それぞれの器官の機能を高めるということが一番正しいと今の私は考えています。その結果皮膚の新陳代謝を高め、人体の免疫機能を高めて早くアレルゲンとの戦いを終わらせることだけであります。従って飲まなくても良いのですが、その分完治が遅れます。)砂糖を混ぜたりしながら何回にも分けると、少しずつ飲んでくれるようになりました。

 それから1週間、顔だけだった湿疹が背中からお尻、太股へと、どんどん広がっていきました。主人の話を聞いて覚悟していましたが、薬を飲む前よりもひどくなったのを見て、本当に治るのだろうかと不安な日々が続きました。(アトピーの症状は皮膚の"ウンコ"であり、出せば出すほど、つまり症状が出れば出る程喜んでもらえば良いわけです。)塗り薬を塗ると、塗ったとたんに汗が汁のように噴き出してきます。浮腫も出て、顔の相も変わっています。痒くて掻きむしっては、痛くて泣き叫んでいる娘を見て、私も辛くて何度も泣きました。町で見かける赤ちゃんのようなスベスベの肌は、もう見ることはできないのかと情けなくなりました。

 生後6ヶ月、離乳食を始めました。松本医院では、赤ちゃんのアレルゲンを調べる血液検査をしないので、何がアトピーの原因なのか分からず、おそるおそる食べさせていました。(いたいけな赤ちゃんに絶対必要であるとは言えない血液検査をして赤ちゃんをいじめたくありません。しかも言うまでもなく今のアレルギー検査は不完全なものであり、例えば検査項目の中にハウスダストというものがあります。しかしハウスダストの実体は何でしょう?チリやホコリの実体は何でしょう?私の家のホコリとあなたの家のホコリの内容は違うでしょう。さらに昨日の私の家のホコリとあさっての私の家のホコリとは異なるでしょう。こんなものが試薬として使われているときに、一体このような検査を信じることが出来るでしょうか?最近この検査の内容について検査試薬を作っている会社に電話して聞いてみますと、企業秘密だから言えませんとのことです。)あまりに不安なので、血液検査をして欲しいと頼みましたが、松本先生は「アトピーだからといって、除去食をする必要はありません。だから、赤ちゃんを痛い目に遭わせて検査する必要はないのです。」と言われました。(実はアレルゲンは食べ物ではなくて食べ物の蛋白とむすびついている農薬などの化学物質であり、この化学物質はあらゆる食べ物と結びついているわけですから避けることはできないのです。従ってすべての食べ物を食べなければアトピーは必ず治りますが死んでしまいます。)初めて牛乳でパン粉を作ったときには、そのパン粉が顔に触れたとき一瞬にして顔半分腫れ上がり、床を転げ回りました。泣きじゃくる娘を抱えて松本医院に走りました。(これは顔の傷からアレルゲンが進入して皮膚の真下にある感作された抗体と即座に反応したためです。感作された抗体とは痒みの原因や炎症の原因となる化学物質を作っている肥満細胞という細胞に結びついたIgE抗体のことを言い、すぐにでもアレルギー反応が起こる準備状態のことを言います。この感作された抗体にアレルゲンがくっつくとアレルギー反応が即座に出現するわけです。)先生は「だめなものでも止めずに少しずつ与え続けなさい、慣れさせるのです。」と言われました。(私は慣れるというような非科学的な言い方は普通しません。けれども慣れるという言葉は間違いではありません。或るものに慣れるというのは、その特定のアレルゲンに対するIgE抗体が使いつくされることであります。)体中の湿疹もジュクジュクしたり乾いたりを繰り返し、これで治っているのだろうかと半信半疑でした。

 通院を始めて3ヶ月、今度は主人のアトピーがひどくなりました。手のひらと足の裏以外は全身ジュクジュクしてきました。この状態では会社に行くこともできず、1ヶ月半程休みました。その間、服も満足に着れない状態でした。シャツを着ると体液で体に張り付いてしまうのです。薬を塗ると汁が噴き出し、ひどいときには部屋中生臭くなるほどでした。少し良くなってくると、今度は皮が剥け、あちこち粉だらけです。

 本当にこの方法で元に戻るのだろうかと何度もくじけそうになりましたが、ステロイド剤ではだめと思っているのですから、先生を信じるしかないのです。それから2ヶ月程して梅雨の時季が終わった頃、二人ともやっと症状が落ち着いてきました。まだ顔に出ていましたが、主人は会社に行き始めました。

 7月の終わり頃から、お風呂に入れる煎じ薬を処方されました。夏だったので、娘には行水代わりにこのお風呂に毎日3・4回ずつ入れました。すると、ジュクジュクしていたお尻の皮が乾燥してボロボロと剥け出しました。このお風呂は、最初は皮が剥けて痒いのでよけいに掻きむしってひどくなったように見えましたが、1ヶ月もすると、遠目に見るとアトピーだと思えないくらいになりました。

 それから1年、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら少しずつ良くなっていきました。今では何を食べてもほとんど大丈夫になりました。そして、96年の8月、娘は2歳の誕生日を前に、先生から「今日で終わりにしましょう。」と待ちに待った言葉を頂きました。松本医院を卒業することができたのです。本当に有り難うございました。夜も眠れないほどの痒みに耐え、苦い薬を飲み続けた娘を誉めてやりたいと思います。

 今ではツルツルになった娘の頬に、毎日、何度も「良かったなあ。」と頬ずりしています。後は、主人です。長年ステロイドを使っていてせいか、なかなかアトピーは頑固です。少しずつ良くなっているようですが、まだまだ、我が家とアトピーの戦いは続きそうです。(赤ちゃんは早く治りますが、長い間間違った治療を続けた人はその後始末に大変な苦痛と時間がかかります。特に赤ちゃんのときにアトピーの治療の為にステロイドを飲まされたり、注射されたりした人は、なかなかIgE抗体が作り尽くされ、使い尽くされることが難しいように思います。これもステロイドの謎の一つです。)