「アトピー奮闘記(前編)」 春名恵水 32

 私がアトピーと付き合いだしたのは15歳頃からでした。(アトピーが15歳から始まることは絶対にありません。アトピーが生じる原因を考えれば当然のことなのです。まず生まれたばかりの赤ちゃんは始めてこの世の環境物質の全てと出会うことになります。とりわけ母親の母乳を否が応でも1日数回は生き続ける為には飲まなければなりません。この母親の母乳の中に豊富なタンパク質と結びついたありとあらゆる化学物質が含まれており、これらのアレルゲンに対して現代では正常な免疫を持っている全ての赤ちゃんが異物と認識するのは当たり前のことであり、それらを排除する為に多かれ少なかれ湿疹が見られるのです。これを小児科医は乳児湿疹と呼んでいますが、実はこれがアトピーなのです。乳児湿疹が出ない子供はこれらの環境汚染物質であるアレルゲンを異物と認識できないので、免疫の欠陥がどこかにあると考えてもいいくらいです。言い換えると、アトピーが出ればまともな免疫をもった子供だと喜ぶべきなのです。これはちょうど現代の公教育だけでは一流の大学の医学部などに合格が不可能であるので名門私学に通ったり、さらに優秀な先生のいる名門予備校や私塾に行って勉強しなければならないのに塾に行かないで適当にやっている子供(未塾児と呼ばれていますが)とアトピーでない子供は似てると言えます。塾に行くのにお金もかかり、時間も努力も必要ですが、遊んでいる子供よりも少しでも伸びようと向学心を持って現代の競争社会において勝ち残ろうとしている事をたたえるべきなのです。それでも本来はアトピーは無いほうが良く、塾もないほうが良いのですが。)子供の頃から汗をかくと湿疹ができたり、鼻炎を起こしたりしていたのですが、放っておくと自然に治っていたので特に治療などはしませんでした。しかし15歳頃から顔にアトピーが出て皮膚科に通うようになり、それ以来8年位は毎日ステロイド軟膏を塗り続けていました。ステロイドを止めようと思ったきっかけは、塗っても塗ってもどんどん症状はきつくなり、薬の効果も落ちてきていると感じてきたからでした。何度も皮膚科の先生に「ステロイドを使い続けても大丈夫なのか?」と聞いたのですが、答えは「塗り薬くらいで副作用は出ないから、大丈夫。」とのことでした。(医薬品は人間にとって異物であり、かつ元来不必要なものでありますから、それに対して人間の体は何らかの反応を起こします。従って必ず絶対に多かれ少なかれ副作用があります。その証拠には、医者向けの効能書きには全ての薬に対して副作用が書かれています。ただ副作用の重篤度の違いがあるだけです。従ってこの言葉は嘘です。しかも全ての薬の中で最も副作用が質的にも量的にも多種多様であるのは、まさにステロイドなのです。現代の医療の最も反省すべき点は、副作用について患者さんに語らずして使い続ける事が許されていることです。副作用を言わなければ使えないという原則を確立すべきです。実際的には薬の効能書きを全ての患者さんに渡せば済む事です。そんなことをすれば恐らく患者さんは激減するでしょうが。近頃薬状といって病医院で患者さんに渡す薬の副作用の情報書きがありますが、一番大事な副作用が書かれていないのは残念なことです。)それでも不安でいろいろな本を読み、やはり薬は止めなければ!と思いました。でもその頃は新潟で暮らしていて、近くにステロイド離脱に協力してくれる病院を見つけることができず、結局は自己流で離脱を始めたのです。この事は危険だったな・・・と今では思いますが・・・。幸い感染症は起こさなかったのですが、リバウンドは想像を絶するくらい激しいものでした。体験された方は分かると思いますが、リンパ液でズルズルになり全身が大火傷のようになり、体中が突っ張り、身動きが取れませんでした。また夜は眠れず、食欲も無く、体力も落ちてしまっていました。何回も何回も皮膚が脱皮して、私の歩いた後には粉のような皮膚が落ちていました。その内に目がかすむようになり、白内障になっていました。(アトピーに際して出現する白内障をアトピー性白内障と間違って名付けられていますが、実を言えばステロイド性白内障なのであります。もちろんステロイドを使ってきた人の全てに起こるわけではありません。それは水晶体の細胞の核に入っている遺伝子に対するステロイドの親和性(結合性)の度合いが人によって違うからです。ステロイドとの結びつきがなくなった水晶体の細胞の遺伝子は本来の遺伝子に戻ろうとします。このときに古い細胞が崩壊するために水晶体が濁って白内障となるのです。これはちょうど皮膚に塗ったステロイドの効果がなくなると、新しい皮膚を作るためにステロイドの影響を受けた皮膚が崩壊して異常に見えるのに似ています。ところが残念ながら一度異常になった水晶体は皮膚と違って修復が効かないので眼内レンズを入れる必要があるのです。老人性白内障の場合も同じです。とりわけステロイドの影響を全て除去しようとする時に、異常な細胞の入れ替えが一度に起こるので水晶体の濁りが最も明らかになるのです。これもステロイドのリバウンド現象の一つと言えるでしょう。皮膚科医はステロイドで治らないアトピーにステロイドを用いる時に、常にステロイド性白内障の可能性についても言及すべきです。)(現在は眼内レンズを入れて、視力は戻りました。)離脱は本当に苦しいものでしたが、「もう薬だけは使わない!」という決心があったので自然に任せて、食事や生活に注意しながら過ごしてきました。やっと普通に生活ができるようになったのは、離脱後4年も経ってからです。その間、何度も何度もリバウンドを繰り返しました。(当院に来られる患者さんの中にはリバウンドは一度だけで終わると考えている人がいます。理論的には気付く気付かないに関わらずリバウンドはステロイドを塗った回数だけ時間差をもって繰り返されるのです。しかもリバウンドの強さはその時に用いたステロイドの量と強さに比例するのです。もちろんリバウンドが何回、しかもどのくらいひどく出現するかを予想することは不可能です。近頃の患者さんはステロイドでアトピーが治らないどころか、ステロイドを止めれば必ずこのような激しいリバウンドが出ることを十分に承知しているにもかかわらず、医者はまるでそ知らぬ顔をするところが現代医療の一番大きな問題点です。リバウンドは医者の言うように上手にステロイドを用いれば起こらないわけではなく、どんな用い方をしても免疫を抑制すれば必ずリバウンドが出ます。しかも上手にステロイドを使うという言葉には何の論理的根拠もないのです。)それでも完全には治らず、季節や体調によって症状が出たり引いたりを繰り返していたのです。年々症状は軽くなって、リンパ液が出たり腫れたりする事は減ってきましたが、顔や首の皮膚はいつも乾燥気味で色も黒くなっていました。(皮膚が黒くなるのも全ての人に起こるわけではありません。これもメラニン形成細胞にステロイドが入りやすいかどうかによって決まると考えられ、白内障の場合と同じです。)きっと、このまま自然放置していたら、いつかは治るんじゃないかという予感はありました。でもどうして自然放置で治るかという医学的な根拠は自分では説明できなかったのです。いろいろな本で調べても、自然放置で完治するという根拠は分かりませんでした。でも症状は年々軽くなってきていたし、なんとなく(これでいいんだ)と感じていました。でも「いつまで続くんだろう?」という先の見えない不安と「早く完治したい!」という気持ちはいつもありました。

 松本医院に出会えたのは、ステロイド離脱後、なんと8年も経過した200010月のことです。(自分でステロイドを止めて8年経ってもステロイドの影響が抜け切れないところが、ステロイドが悪魔の薬といわれる所以です。ステロイドを使う量と期間に比例して、それだけステロイドの離脱が困難になるのです。従ってアトピーを治す最高の方法を教えましょう。乳幼児に一つでも湿疹が出たら(これがアトピーの始まりなのです)現代医学の免疫抑制薬を絶対に用いないで私との出会いがあることです。しかしそんな幸運に恵まれる幼児は滅多にありません。さらにこの患者さんのもう一つの悲劇はステロイドを止めなければ治らないと気が付いた時に私のような医者に出会うことが無かったことです。このことはリウマチの治療についても当てはまります。現代の医療は出来る限り早く抗リウマチ薬を使うことが最良の治療法だと成書には書かれていますが、これはリウマチが治らないという前提のもとでの話であります。私のようにリウマチも治せる医者から言わせるとこんなに馬鹿なことは無いのです。特にリウマチの場合は痛みを止めるのに最も効果的なステロイド注射をされてから私との出会いがある人が多いものですから、その影響をとるのに大量の時間と多大な苦しみに耐えねばならないのです。

ステロイドは元来免疫に関してだけについて言えば、アレルギーを抑えるために人体の副腎がある一定量を毎日産生していると言えます。例えば胎盤というのは無力な胎児をアレルギーから守る為に大量の女性ホルモンやステロイドホルモンを作っています。これらのホルモンは胎児のみならず母体をもアレルギーから守っているのです。従って妊娠中の母親の全てのアレルギーは楽になるのです。ところが人体の作るステロイドホルモンは進化の中で適当量だけを作ることを許されホルモンバランスを維持し続け健全な人体を支えてきたにもかかわらず、賢く見えて実は愚かな人間は合成ステロイドホルモンを作り出し、それをただアレルギーの症状を取るためだけに大量に用いだした結果、その副作用で悩むようになったのです。40億年の生命の進化の中で作り上げられた人体のホルモンバランスを簡単に変えてはいけないのです。)その頃、いつまでたっても完治できないのでどうしたものかと悩んでいました。アトピー関連のホームページを検索していた私は、たまたま見つけた松本医院のホームページに目が釘付けになりました。私が知りたかった自然放置で完治する理論がそこには書いてあったのです!!体験文も、先生の理論も全て読み、翌日には早速松本医院を訪ねていました。「やっと完治の方法を見つけた!」と期待で一杯でした。「パソコンをやっていて良かったー!」と思いました。何の気なしにクリックしたページが松本医院でした。まさに運命の出会いだと思いました。(その通りです。ただで読めるインターネットはこのような千載一遇のチャンスを彼女に与えたのです。インターネットにはつまらない情報も満載されていますが、その中から私のホームページを見つけ出すのは至難の業だったのですが、幸運な女性です。)その夜、早速漢方の煎じ薬を飲んで一晩眠ったのですが、なんと翌日に症状が出てきたのです。(漢方は免疫を必ず上昇させ、眠っていた免疫が一挙に活性化されるのみならず、皮膚の新陳代謝が驚くほど活発になります。このように自分でステロイドを離脱しようとする蛮勇を持った患者さんもいますが、無限の時間がかかるのです。温泉療法などのいろいろな民間療法がありますが、3000年の歴史のある漢方に勝てるわけがありません。症状が出れば出るほど実はそれだけ完治に向かっているのです。ただ大事なことは出現してきた様々な症状をいかに対処するかが医者の腕の見せ所なのです。様々な困難に対処するのに熟練した私でさえ今でもリバウンドの凄さに身震いすることがあります。それほどステロイド離脱は極めて困難であるものですから、自分でステロイドを止めたり、あるいは民間の業者に命を任せるというような暴挙を絶対にすべきではありません。アトピーの本質を完全に理解し、かつ、無数の患者さんを治してきた医者にのみ任せるべきものです。それが私なのです。)顔も腫れて、眼も開かなくなるくらいでした。こんなにきつい症状が出たのは何年か振りの事でした。久し振りにリンパ液なども出て、今までに無いような症状もありました。実はステロイドを離脱して、8年も経っていて散々リバウンドを繰り返していたので、「今更もう、そんなきつい症状はでないんじゃないか?」と思っていましたが、あんなにきつい症状が出るとは・・・。辛い時は、「症状が出ることが完治につながるんだ。」と自分に言い聞かせ、消毒とお風呂を続けました。お風呂に入っていると、突っ張り感や傷の痛みがマシだったのでずっと入っていたいくらいでした。1日に3回位入っていました。赤い塗り薬は、本当に早く傷が治りますね!どんどんカサブタになって皮膚が入れ替わっていくようでした。そして2週間位経った頃、明らかに以前とは違う良い皮膚が出てきたのです。(この人との出会いは8年前にあるべきだったのです。自分でステロイドを止めた8年間は無駄だとは言いませんが、遠回りされすぎたことは残念です。)何度も何度も皮膚は剥がれて、少しずつ良い皮膚に変わっていきました。朝、起きると布団の中の剥がれた皮膚を集めて、掃除するのが日課になっていました。(IgE抗体を頂点にまで上げて自然後天的免疫寛容を起こした後、下げるよりも遥かに難しいことは皮膚の入れ替えです。例えばもともとアトピーの症状がない人でも、ステロイドを化粧品代わりに長期に使い続けると、不思議なことにステロイドによる皮膚の炎症(ステロイド性炎症)が激しくなりステロイドでは抑えきれなくなり、ステロイドを止めると必ずこの患者さんと同じ状況が訪れます。よく見られることは、アトピー患者の背中を母親が自分の手で長期にステロイドを塗りつけて、最後には自分の手がステロイドによる炎症を起こし、治療の為に当院に来られる症例を沢山治してきました。元の手に治すのに、いわゆるひどいステロイドのリバウンド現象を数年続けねばならない人も沢山治してきました。いずれにしろ「ステロイドは使うな!」と、「ステロイドは絶対に触るな!」と声を大にして叫んでおきます。)1ヶ月くらい経つと、ほとんど落ち着き、久し振りに会った人には「良くなったね!」と言われるくらいでした。3ヶ月目になると、変化があまり見られなくなってきたので、漢方薬のランクを上げていただきました。薬が変わったからまたリバウンドがあるかな・・・と不安なような、楽しみのような、複雑な気分でした。でも以前のように翌日から変化があるということはありませんでした。少し出てきたのは、薬の種類が変わって3ヶ月くらい経ってからでした。でも軽い症状で、早く引いていきました。

 現在もまだ治療中です。治療開始から1年半になります。最近では痒みはほとんど感じず、乾燥気味の肌と色素沈着が少し残っています。IgE抗体の数値は少しずつ下がってきました。確実に良い方向に向かっていることだけは感じています。完治の日を楽しみにしつつ、頑張って続けていこうと思います。(アトピーの完治の日の意味を理論的に説明すると、まず正常な免疫が自然後天的免疫寛容を生じさらにステロイドの抑制が完全にとれ、かつ正常な皮膚に戻った日になります。しかし実際はこの日を正しく決める手段はありません。従って誰が見ても皮膚に異常が無く、患者本人も普通の生活ができるようになったと実感できる日であると言えます。しかも私がいつも言っているように、アトピーは病気ではないのですから、もともとアトピーが完治すると言うのは言葉の矛盾であります。

日本中で一人もアレルギーがいない家庭は皆無です。例えば私自身の家族は7人家族ですが、7人ともアレルギーがあります。私のアシスタントの一人の家族は3人ですが3人ともアレルギーです。もう一人の家族は4人ですが4人ともアレルギーです。私から言わせると21世紀の史上最悪の環境汚染にまみれた地球に住んでいる人が、全くアレルギーが無いという人は免疫が全くない人だと断言しても言い過ぎではないのです。もっと具体的に言えば50年間一度も掃除してきたことがない倉庫のホコリを大量に集めてそれをアレルギーが無いと信じている人の顔にぶっかければ、どんな人でも眼や鼻が痒くなると保証できます。つまり今アレルギーが無いと信じている人は、ただ単にアレルゲンに対して他の人よりも感受性が低いだけです。さらに地球環境が化学物質で汚染されれば全ての人がアレルギー患者となる日がくることを予言しておきます。

アレルギー反応を起こしたりウィルスをやっつけたりするのも癌を退治するのも、実を言えば基本的には異物を認識するというメカニズムは結局同じなのです。しかもアレルギーとリウマチは私から言わせると全く同じものなのです。特にリウマチの反応と癌に対する反応とはより似ています。従ってアレルギーの強い人やリウマチのある人は早く異物を見つける能力が高いので、癌細胞も発見する能力が高いと考えられ癌になりにくいと言えます。その意味でアレルギーやリウマチの人は癌になる可能性が少ないという保証書を身に着けていることになりますから、むしろ喜ぶべきなのです。アトピー万歳!リウマチ万歳!)途中で止めてしまわれる方もいるようですが、それはもったいないです。これから治療を始められる方も、頑張っていきましょう!この続きは完治した時に書きますね。早くその日が来ると良いのですが。