「副作用に伴うステロイド皮膚病との戦い」 長澤 英夫 74歳

 私は30歳位から背中の一部分が痒くて、特に汗をかいたときは特別に痒いので掻いたことも度々ありました。55歳定年退職を間近に総合病院の皮膚科にて診察を受けたところ、すぐに治るからとのことで1ヶ月通院した結果治りました。(このときにその病院と縁を切ればその後のステロイド皮膚症の問題は起こることはなかったわけです。)しかしお医者さんは皮膚癌になるかもわからないので1ヶ月に1度診察を受けるようにとのことで2年間通院しましたがその兆候がなく安心していたところ、お医者さんの転勤に伴い、国立病院のお医者さんが来ておられ、診察の結果皮膚を切り取り検査をすると告げられ、その結果の病名は"カイセン"(正しくは尋常性乾癬であり現代医療では勿論治すことはできません。この治療も結局はステロイドしかありません。)と言われ入院せよとのことで40日間入院し、その後塗り薬をもらい約15年間1週間に1度通院にて治療に専念しましたが、背中の痒みは患部より移動しているように思いました。しかし国立病院を信用するしか方法がなく長期間塗り薬を使用し続けました。その後だんだんと痒い部分が拡大とともにブツブツのようなもの(これをステロイドニキビと言います。)がでてきました。しかしどうすることもできず、そのうち治ると信じるしかありませんでした。「病は気から」と言われているのであまり深く考えないようにしました。痒くてたまらないのは他人の方にはわかりません。(元来、ステロイドを使わないときにはアトピーの痒みは掻いて楽しむことが出来ると言えます。しかしステロイドにより人為的にアトピーの症状がひどくなってくるとそのようにはいきません。しかも皮膚科の医者は掻いてはいけないと言うものですから二重の苦しみになります。いずれにしろ痒みは掻いて楽しむことをモットーとすべきです。と言うのも、痒みがひどければ就眠中も本能的に掻き破っているわけですから、当然「掻くな。」というのは100%誤りなのです。)月日とともに痒みの部分は広がり心配し、どうすればいいか考えていた時期に丁度「漢方薬で治療してみたらどうですか」いわれました。わらをもつかむ気持ちで平成5年8月に松本先生の診察を受けました。(紹介された方はやはり私が治してあげたアトピーの患者さんだったわけです。)

 「これはアトピー性皮膚炎でステロイド薬害であり、現在使用している薬は止めなさい。私が必ず治してあげます。」と断言していただいたので、このように自信をもって診察されたお医者さんは今までお目にかかったことがないと思い、先生を信じて治療に努力しました。(私は医者の一番大事な仕事の一つは、患者さんの悩んでいる病気が治せるか治せないかをはっきりと患者さんに伝えることだと常々考えております。従って、アトピーは治せるから治せると明確に伝えるだけのことなのです。)治療期間中2ヶ月後に手・顔・首が赤くなり頭は痒く白くなっていくようで、他人様が見たら"ライ病"ではないだろうかと思われるようであり、自分でも鏡を見れば気持ちが悪くて皮膚は剥け黄汁がでる状態で、このまま命がなくなるかと考えたりしました。(激しいステロイド離脱症状を経験されたわけです。この12年間勿論アトピーで死んだ人は誰もいません。原理的に皮膚の病気であるアトピーで人が死ぬわけはないのです。しかし、アトピーの合併症であるブドウ球菌感染症とヘルペスウィルス感染症により放置すれば、原理的には命を失うことも有り得るわけです。従って常に重症な患者さんには毎日体温を測定するよう命じています。37.3度以上の熱が出たときには必ずいずれかの感染症を疑い、即座に治療を始める必要があります。)病気と命は別だと自分に言い聞かせました。他人様に接することを嫌っていましたが、居直って気持ちの悪いおじいさんと思う人は思っていればいいと考え始めればだんだん気分が落ち着き、その後は松本先生の診察を受けるのが待ち遠しくなりました。週1回は必ず診察を受け平成5年8月21日より平成8年6月28日までにおよび自分でも治ったと思いました。この治療期間を振り返ってみると、煎じ薬と塗り薬を使用後、平成5年10月29日には相当の皮膚の皮が剥けました。先生は「皮を剥くのを日課にして仕事と思って努力しなさい。」といわれたのでなるほどと思い痒くて掻くと皮はめくれるが、あまり掻くと黄汁がでるような状態が続きました。この時期が最も辛い時期で夜も眠れず1晩中掻き続けたことが1ヶ月程度あり、夜はビニールを敷いて休むことも度々で、疲れてウトウトしたときには朝方になっていました。この辛いことはこの病気になった者でないとわかりません。松本先生より眼もアトピー性白内障や老人性白内障になる可能性があるので注意するようにいわれました。なるほど眼も痒くてしかたなかったので、いずれ老人性白内障になると思うようになりました。現実に平成6年1月に眼科の検査で白内障とわかりました。しかし皮膚病の為にどうすることもできず我慢しました。平成6年1月には皮膚の皮が剥ける状態も峠を越しました。平成7年6月には痒みも少なくなり、頭・手は少し痒みがありましたがそれ程でもなく、眉毛・頭髪の抜けていた部分が元に戻り始めました。次に眼の治療のために眼科に通院し、平成7年12月に左眼を、平成8年4月に右眼の白内障の手術を受け、5月には眼の治療は終わりました。眼鏡を使用する必要もないと眼科の先生にいわれました。後は皮膚の治療のみに専念しました。

 現状は松本先生を信頼した結果と思うと同時に、他の医務員の方々の思いやり・いやな顔もせずに親切にしていただいた励ましの賜物であると思います。また、私の治療についての松本先生の適切な指示と助言により辛い日々を積みあげた結果でもあり感謝しています。(もう完治され、来院されておりません。)