「アトピーと家族」 浪江 宏明 20歳 1996年も終わろうとした19歳の時、アトピーで悩んでいた私は、漢方薬でアトピーを治した人がいることを知りました。(松本医院で治しました。この患者さんの親戚の方です。)アトピーと診断された14歳の時以来、皮膚科に通ってステロイドを使っていました。症状が出た顔に塗ると、想像以上に良くなりましたが、良くなったり悪くなったりでその効果を疑問に思っていました。(つまりステロイドを塗るたび毎に効かなくなり、その度毎にステロイドの離脱症状が出て、これをリバウンドと一般に呼んでいるわけです。リバウンドというのは特別な現象ではなく、ステロイドが代謝されて効かなくなるたび毎に生じているごく当たり前の現象です。ところがステロイドの影響を出しきらないうちに再びステロイドを用いることを繰り返しステロイドの影響が蓄積していきます。当院に来て初めてその重なったステロイドの影響を全て連続的に除去していき、いわばリバウンドの総決算をしてしまうわけです。つまり最新のステロイドから最も古いステロイドまでを、現在から過去にさかのぼって全て除去するわけです。その結果大リバウンドになるわけです。) そして、「漢方薬で治そう!」と思い松本医院に通い始めました。松本先生はまるで自分のことのように、アトピーで悩んでいる私を心配して下さり、「必ず治してあげる。」と言われました。私は漢方薬による根本治療を知り、松本先生の言葉を聞き、うれしさの気持ちでいっぱいでした。そして顔は副作用が出やすい傾向にあり、ステロイドの使用が難しいと分かったので、その使用を止めることを固く決心しました。(固く決心しても中にはその症状のひどさに耐えきれない人がいます。勿論、ステロイドの大リバウンドで死ぬことは無いわけですし、何も天才的な努力と忍耐がいるわけでもありません。ただ激しい大リバウンドの後には天国が待っているという希望を持ち続ければ、全ての人が幸せにいたるわけです。これは受験勉強をしている人が東大に合格する難しさと比べれば、いとも簡単なことです。というのはステロイドを乗り切るための受験競争は全ての人が合格できるからです。) ステロイドの服用を止めると、リバウンド症状が出てきました。顔からいっぱいの液体が出てきて、顔が赤く腫れ上がりました。湿ってジュクジュクしたのが気持ち悪くて、よくティッシュで拭き取りました。また、よく皮膚を掻きました。掻くところがなくなるくらい掻いたので、引っ掻き傷がひどく、痒みより痛みを感じました。そして顔を洗うことさえ一苦労で、いったいどうしたらよいものか途方に暮れていました。 神経質になって皮膚をいじりすぎたことに後悔しましたが、今となってはどうしようもなく、「これから気を付けよう。」と思いました。(掻くのは全く問題はありませんし、勿論皮膚をいじりすぎることも問題ありません。常に治った日のことを思い浮かべれば耐える力が生まれてきます。)そして悲観的になっていたので、「笑おう!」と思いテレビを見ました。顔の表情がつけにくいのに笑いすぎたため、少し苦しかったです。この悲惨なリバウンド症状を乗り切るのに、家族の協力はとても心強く感じました。特に母はすごく心配そうで、私のためにいろいろしてくれました。(家族はアトピーについては全く無知の一言に尽きます。したがって、ステロイドを抜いていくときに出現するリバウンドがアトピーの根治にとっては避けがたい症状であることが理解できなくて、ただ目の前の症状のひどさにおろおろすることは当然のことであります。しかし専門家である皮膚科の医者も同じように本質とは関係の無い皮膚の症状だけでパニックになるのは理解できないことであります。さらにアトピーの治療の有効性を症状だけで評価することは、全く無意味であることを日本を代表する皮膚科の偉い先生方も気が付いていません。つまり一言で言えば、アトピーが何であるかさえ、またアトピーが治るということの意味さえ理解していないのです。従ってアトピーは治らないからステロイドを使って一生付き合う以外にないと言いきる態度もとても残念です。実を言えば、この患者さんを紹介してくれたアトピーが治った患者さんはそれほどひどいリバウンドを経験せずに完治したものですから、この患者さんの父親は自分の息子が同じように簡単に治ると考えていたようです。しかしステロイドの禁断症状はそれまでに利用してきたステロイドや抗アレルギー剤・抗ヒスタミン剤・抗炎症剤の質と量によるわけです。それを知っているのは患者さんの記憶ではなく体の免疫の記憶なのであります。従ってそれは千差万別であり、予言をすることは全く不可能であります。) リバウンド症状が一番ひどかった2ヶ月目になると、目に見えて良くなっていないため、、家族は不満そうで「いつになったら治るの?」とよく聞かれました。(アトピーは現代の医療では治らないとされています。そのアトピーを私が治してあげると言ってもらえるだけでも家族は喜ぶべきなのです。それを2ヶ月で治ってしまうと考えるのは贅沢すぎるというものです。)まず家族を納得させる説明が必要になりましたが、今までの行動が頼りなかったようで、説得力がなく、納得させることができませんでした。そして父は「直接、松本先生の話を聞きたい。」と言い、今の現状を知るため診察室に一緒に入ってきました。しかし口下手な父の話す内容は、治療方法に文句を言っているようで、なんだかとんでもない方向に進んでいる感じで最悪の事態が想像でき、とても不安でした。 松本先生の驚きももっともで、明らかに話を聞きに来た態度でないと不審そうでした。松本先生は頭に来ているようで言葉の調子は強く、説明をするというより皮肉を言っているので、父は不愉快に違いないと思いました。このままでは私と父との意見の一致が得られないのではないかと心配でしたが、松本先生の話は厳しい内容でしたが、私の説明より説得力があり父も納得したようで、私の希望通りになり、続けて通うことになりました。(家族が自分の子供のステロイドの大リバウンド現象が理解できずに、説明を求めるよりも抗議を示しに私に会いにくることがしばしばあります。つまりこのようなひどい大リバウンド現象は私が作りだしたと言わんばかりにであります。ステロイドを中止すれば、必ずこのような症状が遅かれ早かれ出ることを全く分かっていないのであります。勿論この大リバウンドの症状を一時的に取るのはいとも簡単であります。再び症状が出なくなるまでステロイドを大量に使えば良いわけです。(勿論、これをして大もうけをしている悪徳医師がいます。例えば高知のT病院であります。)しかしこれはますますステロイドから結局逃れられなくするだけであります。まさにこの意味ではステロイドは麻薬なのであります。従ってステロイドの離脱症状はより正確にはステロイドの禁断症状と呼ぶのにふさわしい現象であります。ちょうど麻薬の禁断症状と言うように。)着実に1日1日が過ぎていき、リバウンド症状も5ヶ月目になると、赤い皮膚もだんだん白くなってきて、顔の表情もつけられるようになりました。そして1年が過ぎる頃には、アトピーであるなんて見た目にも全く分からないほどになりました。外に出たくなかったので家にこもりがちになっていましたが、普通の生活ができるようになり、アトピーが治ったことは1年間の苦労を忘れても良い程嬉しいことです。(勿論完治され来院されておりません。)
<上の表の説明> 14歳から19歳までの5年間だけしかステロイドを用いてなかったので、初期値も最高値もIgE抗体はあまり高くならないで完治してしまいました。結局のところIgE抗体を使いきってしまうよりもはるかに困難なのは、ステロイドにより変質した皮膚を入れ替えることであります。IgE抗体を使いきるということと、皮膚の変質を回復させることとは全く別のことであります。多くの皮膚科医はこの事に全く気が付いていないようです。 |