「アトピーと漢方薬」 小川 さと子 2歳

 私に子供が"アトピー"と診断されたのは、生後4ヶ月頃でした。耳が切れ口の周りが赤くなりましたが、冬の間だけでその後はきれいになりました。1年後、また赤くなりました。今度は以前よりも広い範囲に出てきました。子供が大きくなったせいか、痒みのために夜何回も起きることがしばしばでしたが、この時も春になるときれいになりました。2年後、更にひどくなって赤いブツブツが出てきました。今までは病院の塗り薬は同じものでしたが、ひどい時用に少し強い薬が出されました。それでも治らないので更に強い薬が出されました。今度は、ほぼ毎日夜中に起きて痒がることを伝えると飲み薬まで出されました。飲み薬の効果はてきめんで、それを飲むと夜はぐっすり眠ってくれました。(恐らくこの飲み薬はステロイドでしょう。飲み薬でてき面に痒みが取れるのはステロイドしかありません。こんないたいけな子供にステロイドを飲ませるとは本当に鬼のような医者ですねぇ。というのは成人してからステロイドを抜くために私を訪れる患者さんの中に、なかなかIgE抗体が下がりきらない患者さんがいます。このような患者さんは免疫が未熟な乳幼児期に知らず知らずステロイドを医者から投与された可能性が大きい患者さんばかりです。実際確実に乳幼児期に数年継続してステロイドを服用した患者さんがいます。このような患者さんのリバウンドというのは一過性のものではなくて、いつまでもいつまでも継続し、実に哀れであります。このようなときには一層ステロイド憎しという感情が高まります。)少し飲み薬について疑ってはいたものの、2番目の子供の妊娠中の私はとっても助かりました。きっと春になったら、今まで通りに治ると思っていました。しかし、その年は春になってもあまり変化が無く、飲み薬も4ヶ月位飲み続けていたので少し気になってきました。1度試しに薬を止めてみると、アトピーはみるみる酷くなり、顔も人相が変わるくらいカサカサしてきました。それを見て本当に良いのか怖くなり、何か他の方法で治せないかと考えました。その時、知人に子供のアトピーを漢方治療で治したと聞いて、試してみようかなと思いました。(この友人の子供も当医院でアトピーを治してあげたのです。)ちょうどその春は2番目の子を出産し、上の子には辛い漢方治療のスタートになりました。

 私の入院中に祖母に松本医院に連れていってもらい、祖母に煎じ薬・入浴剤・塗り薬と全部してもらいました。幼いなりに気を使っていたのか、全然ぐずらず夜も泣いていないようでした。しかし、私が家に帰ると甘えからか我慢が噴き出したのか、消毒が痛いと泣き(ジュクジュクしていたので本当にしみたのでしょう)、お茶が辛いと嫌がり、夜も痒がって何度も何度も起きました。そして、いったん落ち着いたかのように思えたアトピーが更に酷くなってきました。いわゆる"リバウンド"です。その時、生後間もない2番目の子は先天性の病気で手術をし、別に入院していました。その子のために夜中も起きて母乳を絞り、2日に1度母乳を2時間程かけて電車で病院まで運んでいました。言い訳ににしかすぎないかもしれませんが、それだけでも産後の私は十分疲れていたので、上の子のアトピーで更に夜起こされることは苦痛でしかありませんでした。かわいそうと思いながら、眠気に勝てず「我慢しなさい。」と叱ってしまいました。叱ると、子供は泣き悪循環でした。夜ぐっすり眠れない分親子共に昼寝をしっかりしました。それでも夜眠れないのは苦痛でした。はっきりいって薬代が高い、いえ高すぎるだけに半信半疑でした。しかし、押さえるだけの病院の薬の怖さは知っているので戻ることもできず、毎日毎日もう少しだけ頑張ってみようと思い、それの繰り返しでした。初診で先生に「軽い方や、すぐ治る。」と言われていたので 、私は3ヶ月くらいで治ると思っていました。(この子供はステロイドを乳児期に飲んだことがあるので、それを知らないで言った言葉でした。私は近頃いつ頃治るかという事にはコメントしなくなりました。それはこのような経験をいくつかしたからです。つまりどのような治療をしてきたかを本当に知っているのは体だけです。)しかしその3ヶ月はむなしく過ぎ、半年までなんとか頑張ろうと思い直しました。上の子のアトピーはリバウンドはあるものの、今まで読ませていただいた手記のような酷いリバウンドではなかったように思います。しかし、少し良くなったかと思うと、また悪くなるという繰り返しでした。半年になる頃、主人も一緒に先生のところに行って話を聞くというので医院に行ったのですが、言われることは同じであまりのあっけなさに彼も閉口してしまいました。私もまだ先生のおっしゃることには半信半疑でした(すみません)(大リバウンドを耐えるのは患者さん本人です。しかも幼少時であれば母親が引き受けなければなりません。アトピーは必ず治してあげますが、大リバウンド無しに治すことはできません。例えば、今をときめく土佐清水病院というところでは1週間で治ると銘打って、多数の患者さんを集めていますが、全てその効果はステロイドの大量投与によるものです。しかしその後の大リバウンドたるや恐ろしいものがあります。すぐにアトピーが治るということほど嘘はありません。しかし藁をも掴むような患者さんはころりと騙され再びその上にリバウンドで苦しむわけであります。)しかし、他に良い方法はありませんでした。薬局でも薬を買って試してみたのですが、効果はなく、先生に送っていただいた塗り薬を塗りながら祈っていました。そして、いつも薬を手にするたびにこれで最後でありますようにと願っていました。その頃、下の子も少し耳が切れ、肩の辺が赤くなってきました。下の子も同じお風呂に入っていれば治るとのことでずっと入っていました。その冬もアトピーとはさよならできずに過ぎてしまいました。春になり、いよいよ我が子も幼稚園に入園しました。アトピーが現状のままで良くならなかったら、煎じ薬を持たせて登園させようと思っていました。新しい環境でストレスを感じ、またひどくならないか心配でした。しかし、幼稚園が大好きになり、お友達もたくさんできて、元気に通ってくれました。ふと気がついてみるとアトピーが良くなりだしていました。4月も終わりの頃です。様子を見てもリバウンドはなく、少しずつきれいになり始めました。夜痒がっても、お薬を塗るだけでぐずらずに眠れるようになりました。夜起きない日もたまにありました。良くなったのが目に見えてきたので、本当に嬉しくてあと少しと自分を励ましました。先生には言いませんでしたが、アトピーの赤みも消えあまり痒がらなくなってからは、勝手に煎じ薬・入浴剤は2日に1回にしていました(何しろ少しでも薬代をうかせたかった)。それでもひどくはならず、痒がらなくなりました。そして、下の子は秋になっても昨年のように赤いブツブツは出てきませんでした。先生に「もう治療しなくてもいい。」と言われたときには電話口で思わずにやついてしまいました。気持ちが晴れ晴れしました。(このように最後の最後まで私を疑いつづける患者さんがいます。このストレスに耐えてアトピーを完治にいたらせたという強い忍耐の勝利の記録がこの手記であります。)

 最後の最後まで半信半疑だったもののここまでこられたのは、「必ず治る」とおっしゃった先生の自信に満ちた言葉のためでしょうか。(患者さんを治せないにもかかわらず、引っ張りつづけて金を儲けるつもりは毛頭ありません。ステロイドやストレスで免疫を抑えなければ、免疫寛容を起こし必ず治るわけですから、このような発言ができるのです)それとも、治って欲しいという願いからでしょうか。いづれにしろ、「病院のお薬は全て捨てなさい。」と病院のお薬から完全に引き離してくださった先生に感謝します。先生のおっしゃるとおり1年半でアトピーから解放されたのは早い方なのでしょう。いつも子供のお友達が赤くジュクジュクしているところを見て「怪我してる。」と言っていたのが嘘のようです。本当に病院のお薬を止めて良かったと思います。アトピーを治すのに、ぐずる子供をを叱ることもありましたがとにかく必死でした。とにかく長い間ありがとうございました。(本音を語る患者さんの母親ですが、最後はこのように治ってしまったのです。私も人の子ですから、自分の嘘偽りのない誠意がすぐに分かってもらえる患者さんのほうがストレスがなくて幸せです。でも他の医者が治せない病気を私だけが治せるときに、このように最後まで半信半疑でおられたことも当然なのかもしれません。)

追伸:痒がるときに小さな保冷パックを持たせて冷やすと少し痒みが治まり効果がありました。子供は氷が好きです。