「ステロイド注射をされて」 鳥羽 真弓 22歳 私のステロイドを飲んでいた期間は約2年半です。(アトピーでステロイドを飲んできたというのは恐ろしいことです。勿論ステロイド注射を受けてくることはもっと恐ろしいことですけど。というのはどちらもIgE抗体の産生を極端に押さえることが可能ですが、止めたときにIgE抗体を作ろうとする跳ね返り現象(リバウンド現象)が極めて強くなります。この患者さんの場合は初診時のIgE抗体は174であまり高くなかったのですが、ステロイドを一切やめると数ヶ月で40倍の6180まで上昇しました。この時の皮膚の症状はまさに地獄の状態としか言えないほどひどいものでした。このようにIgE抗体はステロイドの注射や錠剤を連続して投与すれば一時的にゼロにすることが可能です。それは新たにIgE抗体を産生しない限り、作られたIgE抗体は数日で半分になり、最後は代謝されてゼロになります。しかしステロイドを止めるとこのように激しいIgE抗体の産生が始まり、再びアレルギーが激しくなるわけです。従ってステロイドを止めない限りは一時的抑制とそのリバウンドとのいたちごっこになり、永遠にIgE抗体が体内で作られないということがありえなくなり、結局アレルギーから逃れられないのです。なんとならば、IgE抗体がある限りはアレルギー反応を起こしつづけるからです。)しかし、その前までに塗ったり、短期間ですが、時には注射を打たれたこともありました。一度はステロイドを断ったのですが、リバウンドに耐えられず、再びステロイドという麻薬に手を伸ばしてしまいました。(この病院は新聞紙上でステロイドを使わないという振れ込みで有名になった病院ですが、結局最後までステロイドの使用を止めることができなかったのです。世界で唯一完治まで絶対にステロイドを使わないのは松本医院だけでしょう。)ステロイドの恐ろしさを知っていながら飲んでしまった自分に苛立ちながらも、ステロイドを断ってしまったときの恐怖に勝てず、ズルズル時を過ごしてきました。しかし、薬も限界になってきて、遂にステロイドが効かなくなり始めました。(まさに止めることが出来なく、しかも量を増やさなければ効かないというのはステロイドの麻薬的な性格を示すものです。)そんなときに知り合いの方から「漢方でアトピーが治った。」というお話をいただきました。初めはリバウンドの恐怖と、「本当に治るか。」という不安でためらいましたが、でも「いつかは断ってしまわなければならない。これが最後。」と決め、松本医院の扉を叩きました。(近頃患者さんにアトピーは治ることを約束するために、治らなければお金を返すと言っています。最近考えていることは、松本医院の名前を「アレルギーが治らなければお金を利子をつけて返す医院」と変えようかなあと考えています。しかし宣伝になるので駄目だと当局から言われそうです。) 最初、煎じ薬と聞いて「ゲッ!」と思いましたが、「これを飲めば治るんだ。」と思い、先生の「絶対治してあげる。」の言葉を信じて鼻をつまみながら飲みました。飲み始めて1週間程で、皮膚が硬くなり、色が赤黒くなってきました。それから日に日にいろんな症状が出てきました。まず痒みと汁が出てきました。痒みは今でもありますが、ピーク時に比べるとかなりましになりました。痒みで一番辛かったのは、夜眠れないことでした。引っ掻き傷の痛みで、うつぶせでしか眠れず、寝返りもうてませんでした。夜、横になって朝起き上がろうと思っても、身体中の皮膚がバリバリに固まって、まず起き上がるのに痛みが走ります。そして、歩くときにも手足を動かすと痛みが走ります。ひざを曲げると今度は伸ばすのに痛みが走り、お風呂のお湯もしみます。一番辛かったのは、入浴剤の一番煎じ薬を身体に塗るときでした。泣く気なんて全然無いのに勝手に涙が溢れてくるというくらいの激痛でした。とにかく最初は痛みと痒みとの戦いでした。汁は、それはもうあらゆる所からあふれ出すという感じで、顔・腕・足・背中・胸はもちろん、おへそからも汁が出てきました。一番辛かったのは、耳の中から汁が出てきたことでした。汁が完全に出なくなったのは、飲み始めてから4ヶ月経った頃でした。(この方はステロイドの注射もされた経験があるので、そのリバウンドも高度になるわけです。どんな場合でも、リバウンドのピークがいつになるかも予言できません。ただ体だけが正直に知っているだけです。) 飲み始めて3週間くらいから浮腫で足がパンパンに腫れ、立つと痛くて歩くのがとても辛かったです。先生から「浮腫が出たら、タンパク質を多くとりなさい。」と言われ、プロテインを勧められ一生懸命飲みました。痛みが出るほどの浮腫はあまり長く続きませんでしたが、浮腫が完全にとれたのは飲み始めてから3ヶ月経った頃でした。(浮腫が出るのはアレルギー反応が激しくなり始めると、血管が拡張し、血管の隙間から炎症細胞や水生成分や蛋白が組織間に漏れ出て浮腫が出始めます。さらに血管内の蛋白が減れば減るほど、血管内に水生成分を取り戻す力が無くなり、ますます浮腫が出て、その結果体重も増えることがしばしばあります。従って浮腫が出たときには蛋白を十分過ぎるほど補充する必要があります。) 不思議に思ったのは、夏だというのに震えがくるくらい寒かったことです。汗も出ているのに芯が寒いという感じです。そんな感じなので夏でもほとんどクーラーいらずでした。(ステロイドで変質した皮膚が全て崩壊し、新たに正しい遺伝子を持った皮膚ができるまで正常な皮膚の作用のひとつである保湿作用が消失し、保温作用も無くなり、体が震えるほど寒くなったりするのはしばしば見られることであり、当たり前のことです。) 今漢方を始めてから半年が経ちましたが、起き上がるときの痛みはなく、お風呂のお湯もしみません。また手足を動かしても痛みがなく、気の狂いそうな痒みは普通の痒みになりました。今回のアトピーの治療で、今まで当たり前のようにしてきたことが、実は一番難しくて、当たり前のようにできるというのがどんなに幸せか分かりました。そして、家族の有り難さも分かりました。自分の「治りたい!」という強い意志と努力も必要ですが、この治療には「家族の協力と理解が一番大切なんじゃないかな。」と私は思いました。(ステロイドを長期に投与されてきた患者さんのステロイド離脱症状を乗り切るには、絶対に家族の協力が必要であります。勿論、本人の強い意思も必要であることは言うまでもありません。とにかく私の治療で必ずアトピーは治るわけですから、外野席の雑音に耳を貸さずに最後までついてきてください。私の理論は何も始めから仮定して作ったわけではありません。患者さんから教えられたものであり、この理論は私以外に誰も知りません。何故ならば私のようにステロイドが悪いと考えてステロイドを一切止めて治療している医者はいないからです。あらゆる大学病院や大病院の皮膚科をはじめとして、そこから学んで皮膚科を開業している先生達にとってはまずステロイドありきであります。現在の皮膚科の医療はいかに早く症状だけを改善して治った様に思いこませる競争をしなければ飯が食えないシステムになっているからです。ステロイドの使用を止めると、患者さんはその病院へ行くと必ず悪くなるので行くなと宣伝して回ります。私の医院も一時そのようなうわさをたてられたことがありますが、元来内科から出発しているので皮膚科の患者さんが減ってもなんとかつぶれずに乗り切ることができ、さらに患者さんからアトピーは治るという理論を教えてもらったわけです。) 最後に、「絶対治るから。」と励まし続けてくれた松本先生、鍼灸の織田先生、いつも笑顔で迎えてくれる受付の方々に心からお礼を言いたいです。治療はまだまだ続くので、少し良くなったからといって気を抜かないで頑張りたいと思います。 そして、今治療中で辛い思いをしている方へ・・・ 「生きている内、苦があれば必ず楽もあります。今不安だと思いますが、自分がやっていることは間違いではないと確信する日はそう遠いことではないはずです。治ったときのことだけ考えて、今からやりたいことを考えておきましょう。きっと「あれはしんどかったねぇ。二度としたくないね。(笑)」って笑える日が来ますよ。みんなで一緒に頑張りましょう。」 (この患者さんももう来院しておりません。)
<上の表の説明> 注射をされてきたアトピーの患者さんのIgE抗体は極めて低いものです。しかし、ステロイドを完全に止めると生じてくるIgE抗体産生の力はものすごく、この患者さんは初診時の値の40倍近くもIgE抗体が増加しました。このようにステロイドの免疫抑制作用というのは、IgE抗体産生を抑制する作用も非常に大きなステロイドの働きなのであります。 |