「無 題」 森田昭子 56歳
私の体調がおかしくなったのは、平成4年夏のことです。息子と夫が続いて39℃以上の熱が一週間続き、二人が治った後、看病に疲れた私も同じように高熱が続き、医者でもらった薬を飲んでも治らず、ようやく熱が下がった後、両足全体に赤く盛り上った班紋が出ました。それもようやく消えほっとしていると、右ひざが痛くて階段の上り下りがつらく、医者でもらった薬を飲むとすぐに痛みが消えました。 寒くなって来ると、両手の小指が次々痛むようになり、そのうち関節が曲がって来て、平成6年夏頃から、右足親指の付根部分が時々痛むようになり、外反母趾状態に変形してきました。カカトの高い靴をはいた事もないのに、なぜ? その年の秋、大阪市大病院のリウマチ外来を訪れました。「数値が3箇所程出ているが、低いので様子を見ましょう。」その後行った時も、「数値が低いので完全なリウマチではない。悪くなったら来なさい。」とやさしそうな先生に言われました。でも「悪くなったら来なさい。」もっと症状が出てからって、どんな病気でも早期治療が一番ちがうんか。初期の治療方法はないのか。進行するのをただ待つだけの医療であるのか。 それからリウマチに関する本をいろいろ読みました。やはり根本的な治療法が無いようで、強い薬で治療して、最終的には外科的に変形を治すだけのようでした。 そんな時、主人の知り合いで私も良く知っている奥様が、リウマチが一時良くなったが急に悪くなり亡くなられたとの報を聞き、主人も私の事を大変心配するようになりました。 私は、何か治療法は無いのかと、黒豆酒が良いと聞けば作って飲み、リウマチに負けてはダメだと思い、負けない体にしようと良いと思われる食品、黒ゴマ、黒豆、じゃこ、ナッツ類、大豆等を毎日食べ、食事もバランス良く何でも食べるように心がけました。 我が家には、知的障害の男の子が居ます。4400gの体重で生まれ、出産時の酸素不足が原因で、年令は24歳ですが3〜4歳の知的能力しかありません。その子の為にも負けてはいられません。休日の度に、どこかに遊びに連れて行ってほしがります。どこにも行けずに家にいると、ストレスがたまり、だんだんパニック状態になります。朝から夜まで、クタクタになるまでいろいろな所へ遊びに行きます。足もゆるい靴をはき続けてきました。 平成13年5月、姑が転んで歩けなくなり、私は近くの整骨院へ毎日車椅子を押して連れて行くことになりました。姑も少しずつ自力で歩けるようになった頃、私の右足裏が痛くなり、我が家の3階建て住宅の階段の上下もままならず、近くの整形外科に行きました。「使い痛みでしょう、リウマチは出ていません。湿布薬を出しておきますので、様子を見て下さい。」とのことでした。何で使い痛みやのん、歩いて5分ほどの所へ姑を連れて行ってただけで・・・。仕方なく、姑が通う整骨院へ。暖めたり、整体、足裏指圧等の治療を毎日して頂き、ずいぶん楽になりました。しかし朝、起床時、両足裏の関節が張って1〜2歩が歩きにくい、手指が腫れて握りにくい、冷えると指の関節が痛い。 障害の息子は、休日の度に外出したがるが、どこへも連れて行けず、ストレスが溜まりイライラする姿を見るのがつらくて情けない。そんな様子を見ていた主人がインターネットで、リウマチの病院を探し始めました。そして大阪府立病院リウマチ外来へ行くと、待合室は、車椅子に乗って手足が変形した患者さんが沢山居ました。 やはり3箇所程赤い数値が出ていましたが「完全なリウマチではありません。もっと症状が出ないと、様子を見て下さい。」との診断でした。その後、又主人が、松本医院のホームページを見つけ、リウマチを治す病院があるから早く行くようにと、言ってくれました。 平成13年8月、初めて行った松本医院は、ドアを開けると漢方薬の匂いがたちこめ、沢山の人々が椅子に座って診察を待っていました。でも、府立病院のような手足が変形した車椅子の人は居ません。暗さ、重苦しさが無いのです。中国の花鳥画が壁にかかり、幻想的な音楽が流れています。名前を呼ばれ診察室に入ると、普段着で大阪弁の男の人が居ました。この人が先生?そして「必ず治ります。」と握手をしてくれ、その後鍼灸のベッドに通されました。 ふくよかな女の先生の心を癒す会話と鍼灸を受け、久しぶりに心身ともにリラックス出来たひと時で、「毎日自分でお灸をするように。がんばって治しましょう。」と励まされました。沢山の漢方薬を持って帰宅しました。主人に松本医院の様子や先生のことを話すと、半信半疑な私に「そんな医者のほうがええんや。」と笑っていました。 それからが大変。1日3回煎じ薬を沸かし、お灸をする。障害者をもつ私は、その子の歯を磨き寝かせてから、沢山のお灸をしなければならず、終わって寝れるのは毎晩2時頃になります。昼間は主人の仕事を100%手伝い、主婦、障害者の母、そして何とか1日1回のお灸がやっとです。お灸は時間がかかり熱いですが、やったとたん、すっと軽くなり握りにくかった手指がぎゅっと握れるのです。少し飲みにくいかなと思った煎じ薬も、家族から「えらいおいしそうに飲むなあ。」と言われるほどになり、苦にならずに飲んでいます。 2週間に1回、診察と針を受け、数ヶ月した頃、「正常値になってきたねえ。」と先生に言われて、帰宅し主人に話すと「よかったなあ。」と喜んでくれました。 平成14年1月には、両手両足にアトピーが出て、めっちゃ痒く、今までアトピーを他人事に見ていましたが、大変さが少しわかりました。それも3ヶ月ほどで消え、次に前より狭い範囲で、又アトピーが出てきました。現在治療を始めて1年半になりますが、3回目のアトピーが出て(両手)、もうすぐ消えようとしています。足の指の付根の痛みはなくなり、外反母趾部分がたまに痛くなってもすぐ治ります。足に合う靴を色々探し、ストローバーのショートブーツを見つけました。足指がすごく楽で、主人や子供との買い物も、だいぶ歩けるようになりました。長時間歩いた後は、少し足の親指の付根が痛くなりますが、夜ゆっくりお風呂に入り、手の指と(曲がっているので)足の指を引っ張り、足裏のツボを押し、お灸をして寝ます。 毎月検査をして頂いていますが、血沈がまだ高いようで、時折手足が少し痛むときがあります。松本先生に「もう来なくても大丈夫。」と言われるように、毎日がんばって煎じ薬を飲み、真夜中のお灸を続けて生きます。 早く治って、子供を色々なところへ連れて行きたいです。 |